「学校に生理用品を無償で設置することは、本当に教育効果があるのか。」
近年、日本でも生理用品の無償化に取り組む学校や自治体が少しずつ増えています。一方で、その取り組みが 出席率や中退率、学習環境にどのような変化をもたらしているのかを示す、定量的なデータはまだ十分に蓄積されていません。
生理用品の無償提供は、配慮や福祉の文脈で語られることが多い施策です。しかし、教育政策として考えるならば、「必要性」だけでなく効果を示すエビデンスが求められます。
その問いに対し、いち早く実証的に向き合った国があります。
それが、2017年に大規模な実証実験を開始したインドです。
インドが挑んだ「継続的な無償提供」
SHE Pad Schemeとは
インド南部・ケララ州政府が実施したのが、「SHE Pad Scheme」 です。
この取り組みの特徴は、生理用品を一時的に配布するのではなく、
学校内で、必要なときに、継続的に生理用品を無償で入手できる仕組み を整えた点にあります。
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公立学校への生理用品自動販売機の設置
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使用後の衛生的な廃棄設備の整備
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思春期の女子生徒が周囲の目を気にせず利用できる環境づくり
SHE Pad Schemeは、2017年に実証実験として開始され、2020年までに765校まで拡大。
行政データを用いて、その教育的影響が検証されました。

データが示した明確な変化
出席率と中退率への影響
分析の結果、SHE Pad Schemeは 教育指標に明確な改善効果 をもたらしていることが分かりました。
特に顕著だったのが、初潮を迎える生徒が多い 7年生(12〜13歳前後) の女子生徒です。月経が学校生活への大きな障壁になりやすい時期でもあります。
■ 中退率の低下
生理用品の無償提供が行われた学校では、
7年生女子の 中退率が平均で約24%低下。
生理を理由に学校生活から離れてしまうケースが、大きく減少したことを示しています。
■ 出席率の向上
さらに、同学年の男子生徒と比較した場合、
女子生徒の出席率は 22.6%上昇 しました。
これは、生理の日でも学校に来られるようになった子どもたちが
「学校を休まない・欠席しない」という形で結果に現れたのです。
これは単なる一時的な改善ではなく、
継続的に生理用品が手に入ることが、学校生活の質そのものを引き上げたという強い証拠です。
教育機会とジェンダー不平等へのインパクト
この施策が特に効果的だったのは、次のような学校です:
✔️ 公立(政府運営)学校
✔️ 低所得層の生徒が多い学校
✔️ 田舎地域の学校
これらの学校ほど、経済的・文化的な理由で
生理用品へのアクセスが困難な生徒が多く、支援の効果がより大きく出ていました。
つまり、単に「生理用品を配る」だけではなく、
経済的な障壁やジェンダーバリアを直接取り除くことが、教育格差の改善につながるという社会的なインパクトが明らかになっています。
日本にいま求められているのは「次の一歩」
生理は一度きりではなく、毎月繰り返される現象です。
生理用品に十分にアクセスできない状況が続くと、欠席は一時的なものではなく累積的な学習中断 となり、やがて学力低下や中退リスクの増加へとつながっていきます。
しかし、短期的な生理用品配布プログラムの多くは 期間限定・小規模 にとどまり、生理という継続的なニーズに対して、十分な解決策とは言えません。
本質的に対処するには、一時的な配布ではなく、初潮から継続的に支える長期・制度的な投資が必要です。
そして、インドのSHE Pad Schemeが教えてくれるのは、
「設置するかどうか」ではなく、
「どう設置し、どう効果を測るか」 が重要だという点です。
日本においても、
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実証校を設定する
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設置前後で比較可能な指標を定める
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学校・自治体・民間企業・NPOが連携する
こうした枠組みが整えば、日本版のエビデンスを生み出す基盤になり得ます。
生理用品の無償化が、日本の学校教育にどのような変化をもたらすのか。
その答えは、これから日本自身のデータによって語られていく段階にあります。
引用元:
Does providing free sanitary pads keep girls in school?
300 Schools in Kerala Will Provide Free Pads for Schools Girls Under New Govt Scheme
Kerala Government Launched ‘She Pad’ Scheme









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英国「Period Product Scheme(生理用品支援制度)」と運動の背景