英国では、2018年に学生たちが立ち上げた「On The Ball」運動をきっかけに、サッカースタジアムでの無料生理用品提供が広がりました。
当初は“生理の貧困(Period Poverty)”への対策として始まった取り組みは、やがてジェンダー平等やサステナビリティと結びつき、現在ではクラブ運営の標準的インフラへと進化しつつあります。
この記事では、英国でのサッカースタジアムにおける無料の生理用品提供の取り組み事例を紹介し、スポーツにおける女性の観戦機会の平等、安心して参加できる環境整備、そして“見えない不便”の解消という視点から、スタジアムが果たし得る社会的役割について考えます。
① 2018年|セルティックFC
(セルティック・パーク)
スコットランド・プレミアシップのチャンピオンであるセルティックFCは、英国で初めてスタジアムで無料の生理用品を提供するクラブです。
発端は、クラブの女子学生サポーター3名が立ち上げた「On The Ball」キャンペーンでした。
”Period Poverty(生理の貧困)”対策としてタンポンやナプキンの設置を求める嘆願書には2,500以上の署名が集まり、クラブは2018年シーズンより試験導入を決定。
2019シーズンからセルティックパークで無料の生理用品を提供しました。
これは、スコットランドにおける初期導入例として大きな注目を集めました。

On The Ball」を立ち上げたセルティックサポーターのオーレイス・ダフィー、エリン・スレイブン、ミカエラ・マッキンリー
引用:BBC SPORT
② 2018年|ブライトン&ホーヴ・アルビオンFC
(アメリカン・エキスプレス・スタジアム)

プレミアリーグで最初に「On The Ball」を支援したクラブです。
同クラブは、サステナブルな生理用品メーカーと提携し、すべてプラスチックフリーの製品を試合日に11,000点以上無料提供しました。
トップリーグが公式に動いたことで、社会課題への先進的な姿勢を示した“先駆的事例”となりました。
③ 2018年|リバプールFC
(アンフィールド)
メインスタンドでの試験設置が成功し、スタジアム全体へ拡大。
すべての女性用トイレおよびアクセシブルトイレに、無料ディスペンサーまたはバスケットを設置しました。

④ 2020年|マンチェスター・シティFC
(エティハド・スタジアム)
ホーム・アウェイ問わず、スタジアムおよび関連施設全域で提供。
サポーター、スタッフ、来訪者すべてが対象となり、ビッグクラブの公式参加により全国的認知が拡大。
「社会課題はクラブ規模に関係なく対応すべき」という姿勢を示しました。
⑤ 2022年|ボルトン・ワンダラーズFC
(ボルトン大学スタジアム)
ボルトン・ワンダラーズFCは、地域密着型クラブとして持続可能なモデルを構築しました。
シトロン・ハイジーン社との提携により、スタジアムのコンコース内にあるすべての女性用トイレおよびバリアフリートイレに専用ディスペンサーを新設。
100%オーガニックコットン(合成繊維、化学薬品、染料不使用)で作られ、包装を最小限に抑えるよう設計された、プラスチックフリーの「Aunt Flow」の生理用品を採用しました。
地域クラブでも、パートナー企業との連携により、
「社会課題への対応」と「持続可能性」を両立できることを示しました。
⑥ 2024年|アーセナルFC
(エミレーツ・スタジアム)
2024年10月より女性用トイレに無料生理用品を常設。他のビッグクラブに続く形で導入を決定しました。
プレミアリーグの主要スタジアムで“標準装備化”が進行しました。
無料配布から“常設インフラ”へ
Her Game Too × DAME の取り組み
2021年に「Her Game Too」は英国で始まった、スポーツ界における性差別撤廃を目指すキャンペーン。
サッカー界で女性や女児が直面する性差別やハラスメントを社会に知らせることを目的に、専用のキャンペーンやSNS発信で、多くの人に問題を認識させています。
当初はセクシズム問題への対応が中心でしたが、次第に
「生理用品へのアクセスもジェンダー平等の一部」
という認識が共有されるようになります。
そして2025年、サステナブル生理用品ブランド「DAME」 と提携し、スタジアム向けの常設モデルを構築しました。
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再利用可能な専用ディスペンサー
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プラスチックフリー製品
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クラブが継続補充できる仕組み
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クラブロゴ入りカスタマイズ対応
と、単なるCSRではなく、持続可能なインフラとして設計された仕組みが整いました。
現在はプレミアリーグやEFLを含む70以上のクラブと連携しています。
スタジアムへの生理用品設置が解決する社会課題
英国の事例から見えるのは、無料生理用品提供が単なるサービス向上ではないということです。
① 生理の貧困(Period Poverty)
経済的理由で必要な製品を入手できない問題への具体的対策。
② 観戦機会の不平等
「突然の生理」による観戦断念という見えにくい障壁の除去。
③ スポーツ界におけるジェンダー不平等
「スタジアムは男性中心」という無意識の構造への問い直し。
④ サステナビリティ
プラスチックフリー製品や再利用型ディスペンサーによる環境配慮。
スタジアムは単なる競技場ではなく、
地域社会の象徴であり、価値観を発信する公共空間です。
無料生理用品の設置は、「あなたは歓迎されている」、「ここは誰にとっても安心できる場所である」、「スポーツはすべての人のものである」というメッセージを明確に打ち出します。
英国では、この取り組みが“例外”から“標準”へと移行しつつあります。
日本のスタジアムにおいても、生理用品設置は単なる設備導入ではなく、
包摂性・平等・持続可能性を体現する意思表示となると考えられます。
日本のサッカースタジアムへの生理用品導入事例
こうした流れは、日本でも少しずつ広がり始めています。
レッドボックスジャパンでは、スタジアムにおける生理用品アクセスの改善を目指し、Jリーグクラブと連携した取り組みを進めてきました。
①松本山雅FC
(サンプロアルウィン)
長野県を拠点とするJリーグクラブ 松本山雅FC は、地域社会とともに社会課題の解決に取り組むクラブとして知られています。
「トイレットペーパーのように当たり前に生理用品がトイレにあり、女性が安心して観戦できるようにしたい」
というクラブスタッフの声のもと、2021年よりレッドボックスジャパンと連携し、スタジアムの女子トイレ・多目的トイレにスタジアムトイレに無料の生理用品を設置。

また、スタジアムへの生理用品の設置と同時に松本山雅FCレディースU-15向けの研修会「これからのフェムケアについて学ぼう!」を実施。
研修を通じて、選手が自分の体を理解し、普段から適切なケアすることで、試合や試験など大事な日にパフォーマンスを落とすことなく臨むことを後押ししました。

こうした先進的な取り組みは高く評価され、松本山雅FCの社会連携活動「スタジアムトイレに生理用品の設置と生理への理解」は、Jリーグの社会貢献活動を表彰する Jリーグシャレン!アウォーズ において、2022年に「パブリック賞」を受賞。
選考では、生理の貧困という社会課題にスポーツクラブとして挑戦した点が評価され、日本のスポーツ界における先駆的な事例として紹介されました。

受賞セレモニーの様子:左から Jリーグ高田春奈理事、(株)松本山雅 神田文之社長、(株)松本山雅FC 渡邉はるか、レッドボックスジャパン代表 尾熊栞奈
さらに、この活動はスタジアムの枠を超え、地域社会にも広がりました。
松本市では、クラブとの連携をきっかけに、2023年3月8日より、市内の公共施設177か所のトイレにも生理用品が設置されるなど、地域全体で女性を支える環境づくりへと発展しています。
②川崎フロンターレ
(フロンタウンさぎぬま・富士通スタジアム川崎・Anker フロンタウン生田)
Jリーグクラブ 川崎フロンターレ でも、スポーツ施設における生理用品アクセスの整備が進んでいます。
レッドボックスジャパンと連携し、クラブが運営・関係する複数の施設に2023年より無料の生理用品を設置。スポーツを楽しむすべての人が安心して施設を利用できる環境づくりを進めています。
フロンタウンさぎぬま
川崎フロンターレが運営するフットサル施設 フロンタウンさぎぬま では、施設内の女子トイレおよび多目的トイレにレッドボックスを設置しています。

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女子トイレ個室:4か所
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多目的トイレ:1か所
フットサル利用者や地域イベントの来場者など、幅広い世代の女性が利用できるよう配慮された設置となっています。
富士通スタジアム川崎
アメリカンフットボールやサッカー、地域イベントなど多様なスポーツが開催される 富士通スタジアム川崎 においても、生理用品の設置が進められています。
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スタジアム内 メインスタンド側トイレ
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スタジアム内 バックスタンド側トイレ
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会議室トイレ

スタジアムは多くの観客や選手が利用する公共性の高いスポーツ施設であり、観戦中やイベント参加中に必要となる生理用品を安心して利用できる環境を整えることを目的としています。
Anker フロンタウン生田
2023年に開業した川崎フロンターレの新たな地域拠点 Anker フロンタウン生田 でも、生理用品提供の仕組みが導入されています。

施設内では合計 17か所 に設置されています。
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運営ゾーン:9か所
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アリーナ:4か所
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テナントエリア:4か所
フットサルやスポーツ教室、地域イベントなど多様な利用者が訪れる施設だからこそ、誰もが安心して過ごせる環境づくりを目指しています。
川崎フロンターレの取り組みは、スタジアムやスポーツ施設が単なる競技の場ではなく、地域社会のインフラとして機能していることを示しています。
スポーツを楽しむ女性アスリート、観戦に訪れるファン、施設を利用する地域の子どもたちや保護者など、さまざまな人々が安心して施設を利用できる環境を整えることは、スポーツの未来を広げる重要な取り組みでもあります。
こうしたクラブの取り組みは、日本のスポーツ施設においても「生理用品へのアクセス」を社会インフラとして考える新しい流れを生み出しています。
スポーツ施設が社会課題の解決に関わる時代
2026年、レッドボックスジャパンはさらにスタジアムへの生理用品導入を推進し、スポーツの現場においても、女性が安心して参加できる環境づくりを広げていきます。
スポーツは社会に大きな影響力を持つ文化です。だからこそスタジアムから、「女性を社会全体で支える」というメッセージを発信していくことが、これからのスポーツ界に求められています。
引用:
・Periods and football: Meet the fans campaigning for free sanitary products at stadiums
・Celtic FC becomes the first club in the UK to provide free sanitary products
・Celtic FC leads way in tackling period poverty, now other clubs need to follow
・Brighton to offer free sanitary products to female fans in Premier League first
・Brighton to offer free sanitary products to female fans
・Brighton and Hove Albion tackle period poverty with free tampons
・Liverpool: Free period products offered to female fans at Anfield
・Manchester City to provide free sanitary products
・'brilliant example' Man City to give sanitary pads out to women for free
・Free Period Products Now Available At Stadium
・Bolton Wanderers offer free period products at the UniBol
・Emirates Stadium provides women with free sanitary products
・PERIOD PRODUCT ACCESS BOOSTED THROUGH DAME PARTNERSHIP
・Her Game Too: The campaign to tackle sexism within football
Published
・きっかけは女の子2人の会話 J3松本山雅、生理の貧困対策で表彰
・松本山雅FCレディースU-15向け研修「これからのフェムケアについて学ぼう!」を実施しました【報告】
・Jリーグクラブがスタジアムトイレに生理用品を設置!生理を知り、安心をつくるきっかけに~松本山雅FC×RED BOX JAPAN~
・2022 Jリーグシャレン!アウォーズ「パブリック賞」受賞のお知らせ
・松本市内公共施設トイレに生理用品が設置されます
・川崎フロンターレの運営するフットサル施設
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